長生きの秘訣は木の家?
木材、鉄骨、コンクリートなど住宅の構造体の中で、何が最も生き物の住環境として適しているのか。
1986年、静岡大学農学部で水野教授を中心に、マウスを3種類の箱の中で飼育し、その生態を観察するという実験が行われました。実験は、材質の異なる箱(ケージ)を3種類、各10箱ずつ、それぞれのケージの形は縦30cm、横17cm、深さ11cmと内容積は同じ大きさのもので、材質が木材のものと、亜鉛鉄板のものと、コンクリートの3種類でした。
なんと木の飼育箱はマウスの生存率85%以上
上のグラフは実験における、生まれて間もない子マウスの23日間における生態をまとめたものです。
23日間の実験の結果、それぞれの生存率は木のケージで育った子マウスは85.1%、金属のケージは木の半分以下の41.0%、コンクリートに至っては木の1割にも満たない6.9%でした。コンクリートのケージの130匹の子マウスは23日後には9匹しか生き残ることが出来なかったのです。
生物は木の空間に集まる?!
次に下のグラフは、コンクリート製飼育箱に杉とコンクリートの床材を用いて、どちらの場所でより多くのマウスが集まるのかを調べた実験結果です。
結果は一目瞭然でマウスの大半が杉の床材の方に集まりました。
この結果は、材質の熱流量(床材に熱の奪われる量)の差とほぼ一致し、熱流量の小さいほうがマウスにとって好まれるということを示していると考えられています。
すなわち、体から“体温を奪う”コンクリートではなく、保温性のある木材を本能的に選ぶ
ということを、
マウスの行動原理が証明しているということなのです。
耳にされたことがあるかもしれませんが、コンクリートの打ちっぱなしのマンションは寒いということとも関係しています。
人生において何軒も家を建てている人は最後は木の家に落ち着くと言われています。
人の体温を奪う鉄筋コンクリートのマンションやRC住宅よりも、温かみのある「木の家」の方が、人にとっても健康的に暮らす
ことが出来る住環境であると言えるのではないでしょうか?
実験では次のような結果もでています
■成長のスピード(体重の増加)の早さ
生まれて間もない子マウスが目を開くまでの日数も、木の場合は15.6日、鉄の場合は18.1日、コンクリートの場合は17.9日という結果でした。
■木製ケージで育ったマウスは生殖器の重量が重い
マウスを解剖し、臓器の質量を計ったところ、メスのマウスの子宮の平均重量は、木の場合では31.66mg、金属が14.36mg、コンクリートが11.53mgというように、
大きな差が出ています。環境ホルモンと同じく生体から体温を奪うということは生殖機能に悪影響を及ぼすという結果が出たのです
さらに、木以外のケージで育ったマウスは腎臓に水腫の出来ているものが多く見られました。
■鉄・コンクリートの精神面への影響
自分のしっぽを噛み切るという行動はストレスやイライラからくるもので、その行動を1時間おきに10日間それぞれ調査したところ、
木のケージ の場合は80回、鉄のケージの場合は230回、コンクリートのケージの場合は290回あったそうです。
また、子マウスの脳をX光線で撮ってみると、ストレスのたまり具合いが脳の中に黒く物質化されて写し出されていたといいます。
住環境が“ストレス”として生体に及ぼす影響は、鉄は木の約3倍、コンクリートは木の3.5倍以上という結果になっています。
ストレス社会と呼ばれる現代、木の家はストレスを低減し、少しでも安らぎを与えられる場になりうると考えられます。
これらマウスの実験結果をすべて人間に当てはめることができるとは断言できませんが、家を建てる際の構造体の選択肢として「体温を奪わない」「心身ともにストレスという悪影響を与えない」という観点で”木の家”は優位性があると考えています。